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伊藤洋三郎『出会い』


何はともあれ、この現場に出会えたことが、それまでの喜怒哀楽を白紙に戻してくれた様な気さえする。

常々、順撮り、大枠だけ決めた即興的で現場でセリフも決められていく北野組や諏訪組にも興味があったので、今回のテスト無し本番一発80分長まわしは、一気にレベルCの刺激を体験した様で、怒りよりあきれより監督、スタッフ、共演者に心より拍手拍手、又、拍手です。

そもそも座談会の打ち上げで、この5人で映画やりたいねという話になって「台本なくてもいいよ」と云っても、酒飲んでるからその言葉の責任も問われず、明日になれば忘れてしまう、ありがちな光景だった。

ところが、2〜3週間後監督から連絡があってこの企画を知らされるが、正直ピーンとこなかった。

「インタビュアーがいるの?」とか「5人はからまないで点々といるだけ?」とか。そんな感じだったと思う。

しかしこんなに早く実行に移す人は見たことがないので「出会いは偶然じゃない」という師匠の言葉を思い出して、それこそ色々な人達の思いもあって出会いはある、と一寸哀楽にひたってしまった。

現場はもう、不安なまま、ほとんど決めないで行こうと。 ただ、一つだけ、殺しをやってきた男だったので、本番3時間まえ位 に皆から離れて一人でコロシをやったくらい。

その後、小一時間してロケバスに戻ったら、光石君が一人で居て あー皆もそれぞれ自分の時間に入ったんだなァーと ・ ・ ・。

ちょうど撮影2時間位前から本当の緊張状態に入って、ピークに達した頃、祭太鼓の音が聞こえてきて「アー 何かがいるな」とそんな感じでした。


       伊藤洋三郎